三菱UFJ銀行と三井住友銀行の提携にみずほ銀行が参加しなかった理由
最近は通帳だけでなく、ATMも銀行にとってのお荷物となりつつあります。維持費には相当な費用が掛かりますからね。どんどん減らしたいとの思いは、通帳もATMも同じということでしょう。そこで、三菱UFJ銀行と三井住友銀行はATM共同利用を2019/09/22に開始しました。店舗内ATMは対象外ですが、街中にある両行の店舗外ATMは共同利用の対象となり、両行の顧客は使えるATMの数がぐっと増えました。
なぜ、みずほ銀行は参加しなかったのでしょうか。発表当時のニュースソースは見つかりませんでしたが、三菱UFJ銀行と三井住友銀行はみずほ銀行にも声をかけたとの報道もありましたが、みずほ銀行の言い分としましては「イオン銀行との戦略的提携で十分に競争力はある」的なことを発表していたと思います。ただ私が思うにそれ以外の理由もあると思います。
みずほ銀行は自行ホームページでもイオン銀行ATMを完全に自行ATM扱いしています*1。となるとここで問題になってくるのが、三菱UFJ銀行や三井住友銀行のキャッシュカードをイオン銀行ATMで利用したときは、どちらの銀行の手数料体系になるのか?ということです。三菱UFJ銀行と三井住友銀行のキャッシュカードをイオン銀行ATMで利用したときの手数料体系は以下の通りです。
仮にみずほ銀行もこの提携に参加していれば、三菱UFJ銀行の顧客がみずほ銀行ATMを使えば、毎日午後9時までは入出金手数料無料ということになります。ですが、三菱UFJ銀行の顧客がイオン銀行ATMを利用した場合はどうなるのでしょうか。イオン銀行ホームページにあるように、平日午後6時まで無料なのでしょうか?それとも、みずほ銀行ATMと同一視して毎日午後9時まで無料なのでしょうか。
同じことが三井住友銀行にも言えます。仮にみずほ銀行もこの提携に参加していれば、三井住友銀行の顧客がみずほ銀行ATMを使えば、平日午後6時までは入出金手数料無料ということになります。ですが、三井住友銀行の顧客がイオン銀行ATMを利用した場合はどうなるのでしょうか。イオン銀行ホームページにあるように、全時間帯有料なのでしょうか?それとも、みずほ銀行ATMと同一視して平日午後6時まで無料なのでしょうか。
手数料体系がみずほ銀行ATMとイオン銀行ATMで違ってきたら、「みずほ銀行がイオン銀行ATMを自行ATMとみなしている」という前提が崩れてしまします。
ここで、三菱UFJ銀行と三井住友銀行の顧客が、みずほ銀行ATMとイオン銀行ATMを利用するときの入出金手数料体系を同一にすること(他2行がイオン銀行ATMも自行ATMとみなすこと)も不可能ではないでしょう。ですがそうすればみずほ銀行単体との提携よりもさらに多くのコストがかかるでしょうし、メガバンク3行の提携で本来は無関係のはずのイオン銀行に面倒をかけるでしょうし、そしてここが重要なのですがみずほ銀行が「メガバンクNo.1のATMネットワーク」を掲げられなくなるということです。
イオン銀行ATMを除外して、厳密な意味で自行ATM台数が最も多いメガバンクは三菱UFJ銀行です。これにイオン銀行ATMまで加わったら「三菱UFJ銀行の顧客は、三井住友銀行ATMとみずほ銀行ATMとイオン銀行ATMを自行ATMとして使える」ということとなり、みずほ銀行はメガバンクにおけるATMの優位性を保てなくなります(メガバンク、みな横並びになる)。
つまりみずほ銀行がこの提携に参加した場合、「他2行がみずほ銀行ATMとイオン銀行ATMを利用したときの入出金手数料体系」を同一にしても地獄・同一にしなくても地獄。ということです。みずほ銀行には、こういう背に腹は代えられない事情があったのではないでしょうか。
みずほ銀行だけではなく、これからの銀行ATMの動向も注目ですね。