銀行が趣味のブログ

とあることから、銀行がとても好きになっちゃいました。銀行に関する知識・愛を語っていければなと。※当方、銀行員ではありません。勤務経験もありません。

飴と鞭

みずほ銀行が、ついに重い腰を上げたようです。以前の投稿で示したように、みずほ銀行で口座開設する際、「通帳ありで口座開設したら、ずっと通帳あり」「通帳なしで口座開設したら、ずっと通帳なし(インターネット支店)」とお伝えしました。とてもタイムリーですが、それがようやく変わるようです。

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自分が考えるに、ここで問題になるのが「飴と鞭」。どういうことか説明していきましょう。考えられるのは以下の2つのパターン。

  1. 預金通帳をデジタル化してくれた顧客には、それ相応のメリット(ATM時間外手数料無料化など)を付与する。【飴】
  2. 預金通帳をデジタル化してくれない顧客からは、通帳発行手数料を徴収する。【鞭】

上記のどちらかになると考えています。

【飴】

1つ目のパターン。メガバンク他2行は通帳をデジタル化した場合、ATM時間外手数料が無料になる施策を実施しています。恐らくこの流れになるとは思います。ただ、です。みずほ銀行においてATM時間外手数料が無料になる施策と言えばみずほマイレージクラブ(以下MMC)ですが、来月から始まる改訂版MMCの条件の中に通帳のデジタル化という項目はありません。MMCの改定が発表されたのが2019/10/08。上記のニュースが出たのが昨日2020/02/27。この5か月弱の間に突然降って湧いた話なのでしょうか。恐らくそうではないでしょう。となると2019/10/08以前からこの種の話は行内で議題に上っていたと考えられ、それにもかかわらずMMCの条件改定に通帳のデジタル化が盛り込まれていないということは、発表以前からMMCの改定条件には盛り込まないと決めていた可能性があります。

あと数日で改訂版MMCが始まりますが、発表済みのMMCの条件をそんな頻繁にポンポンポンポンと変更するとも思えません(そんなに頻繁に条件を変更しようものなら、信頼を失いかねません)。各行が実施しているポイントサービス的な施策に関しては、各行が独自に決めているのは事実ですが、非公開で行外の関係箇所にお伺いを立てているとも聞きます。つまりMMC等の条件を改定するのは、行内においても行外においても、相当な期間と手間を要するはずです。その期間中に十分議論できたはずの通帳のデジタル化が条件に盛り込まれていないということは、つまり最初からMMCに盛り込むつもりはなかったのではないか?というのが私の見立てです。

では、どうするのか。導入するだけでサービス内容に変更がなければ、顧客の触手は反応しません。恐らくMMCとは別枠で設定するのではないかと、自分は考えています。ただ別の問題も生じます。問題になってくるのは、既存のインターネット支店の顧客です。どちらも「通帳レス」ということは変わらないのに、実店舗で口座開設し通帳をデジタル化した顧客のみが時間外手数料無料などのメリットを享受できるのであれば、不公平が生じます。既存のインターネット支店の顧客も同様のメリットを享受できるようになるのでは?そしていずれは、インターネット支店の新規口座開設は廃止*1になるのではないかと考えています。

以上が私の予想する【飴】のパターンです。

【鞭】

2つ目のパターン。昨今、口座維持手数料もホットな話題ですが、あくまでも今回は通帳発行手数料とは別物であるとします。また発行手数料を徴収するのであれば発行時のみ徴収するのか、それとも毎月継続的に徴収するのかも変わってくると思います。

1.発行時のみ徴収 

通帳の便利さと徴収される手数料とを天秤にかけ、「1度だけならいいか。」という人も出てくるでしょう。ですがこれで多くの人が、通帳離れすることになるでしょう。もっとも銀行側にとっては、手数料を徴収するだけでは、通帳発行にかかるコストをペイするほどの収益にはなりませんが、広く長い目で見れば通帳発行の抑止力にはなると思います。

2.毎月継続的に徴収

もうこうなってくると、通帳発行手数料というよりは通帳維持手数料と言った方が適切かもしれませんが、毎月引き落とされると仮定してみましょう。すると以下の問題が発生します。

【引落日の前日に全額出金し、引落日の翌日に戻す】

面倒くさがり屋でなく(ズル)賢い人なら、これで徴収を免れます。「引落しができなかった時点で自動解約だろ。りそな銀行だってそうだろ?」という声が聞こえてきそうですが、あくまでも名目は「通帳発行における手数料」です。この手数料が引落しされなかったからと言って、口座まで解約したらさすがに行きすぎです。

「んじゃ《口座維持手数料を設定し、通帳レス口座にした場合は口座維持手数料無料に》だったらいいんじゃね?そうすれば、残高不足で手数料の引き落としができなかった場合は自動解約でOKだろ」という声も聞こえてきそうですが、これも現実的ではありません。

まず、りそな銀行の口座維持手数料(りそな銀行では「未利用口座管理手数料」と呼称)ですが、残高1万円未満の不動口座が対象です。つまり、電気代などの自動引き落としなどが設定されていないことが前提なのです(使っていない口座に自動引き落としを設定する人間はいません)。普段日常的に利用しており、口座維持手数料引落日の前日に全額出金し、その翌々日にいざATMで入金し戻そうとしたら「このキャッシュカードは使えません。」のような表示が出て口座が閉鎖されていたら、日常生活への影響が大きすぎます。りそな銀行の口座維持手数料の対象は、不動口座だからこそ成り立っているのです。(一般の口座解約時でも、自動引き落としが設定されていないかを必ず確認します。)

別の例も見てみましょう。国内であと1行口座維持手数料を徴収している銀行があります。SMBC信託銀行(旧シティバンク)です。月間平均残高だけで話しますと、50万円未満だと口座維持手数料が徴収されます。ここの口座はきちんと自動引き落としなどで利用していても、月間平均50万円未満だと口座維持手数料を徴収されます。ただ次がポイントなのですが、残高不足で引落しできなかったとしても、残高0円の口座が維持されるだけで、口座は自動解約とはなりません(「月間平均50万円には満たないものの自動引き落としなどを利用している利用者」に配慮していると考えられます)。なので「引落前日*2に全額出金し、引落日の翌日に戻す」ことは可能なのです。これでは正直あまり意味をなさないかと思われます。ではなぜSMBC信託銀行では成り立っているのか。それは単純にみずほ銀行と比べて、開設済み口座数が少ないからだと思われます。みずほ銀行利用者の中で(ズル)賢い人がいれば、このくらいのことはすぐに思いつきますよ。そしてそれがTwitterなどで拡散されみんながし始めたら、この手数料体系は崩壊します。

つまり、りそな銀行の口座維持手数料とSMBC信託銀行の口座維持手数料は、全く趣旨が異なるのです。りそな銀行は「口座に動きがないという点」に主眼が置かれ、SMBC信託銀行は「月間平均残高」に主眼が置かれているということです。そしてどちらの方法を採用しても、毎月継続的に徴収される「通帳発行手数料としての口座維持手数料」導入は、みずほ銀行にとっては極めて難しいと言わざるを得ません。

以上が私の予想する【鞭】のパターンです。

私なりの結論

 【飴】の方が採用される可能性が高い。【鞭】の場合でも手数料は発行時最初の1回のみ。

自分的にはこんな感じだと思います。

*1:この流れは三菱UFJ銀行と同じ流れです。同行も通帳デジタル化を始めてしばらくしてから、インターネット支店の新規口座開設を廃止しています。

*2:毎月第2営業日